橋本隆志
株式会社八代目儀兵衛 橋本隆志  以下「橋」
京都七条に庄屋の八代目として生まれ先代より引き継がれた味覚をもつ若手米鑑定士。京の料理をこよなく愛し、全国の米愛好家の方々に、
お米に対する熱いおもいをたっぷりにおいしさを表現し日々研究しつづけています。
フランス・モンマルトル 人気料理店「GuiloGuilo 枝魯枝魯」 枝國栄一様
フランス・モンマルトル 人気料理店「GuiloGuilo 枝魯枝魯」 枝國栄一様
日本の京都のくずし割烹の料理人。雑誌などのメディアへも取り上げられている。
1973年、京都府宇治市生まれ。山羊座・O型。
居酒屋、割烹、料亭の料理長を経て2000年6月『枝魯枝魯』開店と同時に話題の料理人に。
01年には東京にて『上ル下ル西入ル東入ル』等をプロデュース。現在は枝魯枝魯(ぎろぎろ)パリ店の料理長。

世界に広まる日本食の現実

橋:
今日は対談ということでひとつよろしくお願いします。
枝:
えーですよ!この前はパリの展示会、お疲れ様でした。大盛況で良かったですね。
橋:
こちらこそありがとうございました。無事終わることができて、先生一同皆喜んでましたよ。
何よりもぎろぎろさんのケータリングの料理は評判が高かったです。
枝:
おおきに。
橋:
では、さっそくなんですが、インタビューさせてください。パリにいかれた経緯から教えてください。
枝:
まず京都の祗園のお店を出店したじゃないですか。その後、僕自らプロデュースしたお店「上下西東(アガルサガル)」を出したんです。そこで東京の人たちにも、京都の「文化的な味」という感性を感じてもらおうと思ったんです。
橋:
なるほど。
枝:
それからオープンして2年半たって次の自分のポジションとしてどうしたいかなって思ったときに、以前から海外でやったらどうやろって頭の片隅には考えてはいてたんですけど、たまたまパリにいく機会があって、向こうで僕の料理を出したんです。
橋:
へぇ、それはすごい。
枝:
それで海外の人たちは食べてすぐに「これは何ですか?」て料理の内容を聞いてくるんです。
橋:
日本食が初めての方ですか?
枝:
そうです。海外の人は、美味しくなかったら美味しくないと。ハッキリと!それが自分にとっては超刺激的でした!それで自分の料理を海外で日本人以外ないろんな人に評価して欲しいなぁと。
京都の店ではそれができずに逆に、2年半先まで予約でいっぱいになってしまってて。食べにきてもらいたくてももらわれない状況はいかがなものかと考えるようになって・・・
橋:
すごいですね!僕も一度友人に予約してもらってお伺いしたことがありますが、その時にいけてて良かったです!
枝:
そして、そんな感情がむらむらとでてきてしまって・・・で、「パリに行ってしまおうか!」と、本店自体を移動してしまったんです。その方が自分の中でもやりがいが出たんです!
橋:
それで、ゆくゆくは、ハワイですしね。
枝:
ハワイですね。
橋:
ということは、世界展開というところは
お考えなんですか?
枝:
そこまで考えてないですね。そんなに興味がないって言うか、自分がやりたい料理をやっていって、自分の料理をきっちりと伝えられる人材があふれる状態になって、いろんな展開をやらなくちゃならない状況になったらやるでしょうけど、それまでは(日本・パリ・ハワイの)3店舗で展開していきたいです。
橋:
なるほど。楽しみですね。
橋:
それから、お聞きしたかったですけど、パリでの和食に対する価値観を教えてください!たとえばパリの日本人の価値観とパリのフランス人の和食に対する価値観を比べてみてどうですか?
枝:
現地の日本人の方は、「やっとちゃんとしたものがきてくれた」って
有難い事にいってもらえてます。大事なのは「味と価格のバランスがちゃんととれてるかってこと」です。
橋:
コストパフォーマンスということですね!
枝:
そうなんです!うどん屋さんや蕎麦やさんはおいしいところがあるんですけどだいたい日本の価格の3倍、高いところだと5倍くらい。だから和食を食べようとなると、どんなに安くても日本円で大体2万円~2万5千円くらいかかるんですよ。そしてまともな日本食を出している店もわずかなんです・・・
橋:
お店の場所がモンマルトルとお聞きしたんですけど、それでも日本人や現地の方に足を運んでもらえるというのは、それだけぎろぎろさんの料理が本物って事を皆さんに認めていただいているんですね。
枝:
ぎろぎろの料理に関しては「今までになかった」という点で評価してもらってます。パリでは僕のやる日本の創作料理をちょっと勘違いされてて、今までは焼き鳥・すし・そば・うどん・定食やお弁当といったあたりが日本食と考えている人がほとんどで、フランスでちゃんとした会席を求めている人っていうのは、たぶん1万人に一人くらいの世界でほとんどいないんじゃないかと最初思いました。
橋:
なるほどね。僕もパリに行って始めて知ったことなんですけど、何とか日本の米を海外で販売する方法はないかとJETROさんに聞いてたんですけど、現在パリ市内だけに日本食レストランは1500店舗あるなかで、日本人が経営しているのはそのうち約150店舗だと。残りの店舗に関しては、ほとんど中国人・韓国人がやってるってことで、本当に日本食が伝わらない。また、行列のできている「ひぐま」さんというラーメン屋さんもあったんですが、実はあのお店、中国の方が経営されているみたいですね。なんで流行っているのか聞いたところ、安いからですって。なので、何が本物なのかわからないって言うのが現状で、ただ単に日本食が流行っているから、食べようという人やお店経営する人も多いみたいですね。
枝:
僕もよく電話でいわれるのが「あなた日本人ですか?」って聞かれます。
橋:
面白いですよね。パリに詳しい方にいろいろお話を聞いたんですけど、「ミシュラン」って、最近京都でも話題になりましたよね。現地のミシュランのパリにあるフレンチのレストランについても老舗が星をとってなくて、新しいお店が星をとっているのは、やっぱり新しい文化やものを受け入れてるお店がとっていると聞きましたが、そのへんの事情はどうなんでしょう?
枝:
そのとおりなんです。パリもだいぶ変わってきていますね。老舗のレストランは評価を下げてるのも現実ですね
橋:
その中で「新しさ」っていう点では、オリエンタルな部分の要素を取り入れている店ほど星をとっているって聞いたことがあるんです。
枝:
そうですね。ゆずにわさびそれから和風、そういうお店はすごく評価されていますね。
橋:
なるほど。いや、実は僕もね、パリのお店に是非行きたかったんです。今回の展示会では、ホテルと会場との往復で終わってしまった状態でして、その時間すらないほどのスケジュールだったので非常に残念だったんですけど、次回必ずお店の方にお伺いさせてください。
枝:
ぜひぜひ(笑)

日本食とフレンチとの意外な共通項

橋:
では、料理の世界感に関してお話をお伺いしたいんです。和食料理の世界観、自分の世界観てどういうものなんでしょうか。
枝:
そうですね~まだまだ和食って可能性が残ってると思っていて、その追求ですよね!肉じゃがでも違う肉じゃがの出し方ってありかなと考えたりします。たとえば、肉じゃが風な味の牛肉巻きとか。ジャガイモを裏ごししてきっちりとお肉の味をしゅませてその具になるものを肉で巻いたりとか。
橋:
なるほどね。
枝:
他にもそれをメインのおかずにかけたりとか、油で揚げてみたりとか、そういうまだまだいろいろな可能性が残ってると思うんです。
橋:
僕、一回祇園時代にお邪魔させていただいたんですけど、枝國さんの料理の原点って和風ソースかなって思うんですよ。
枝:
ありますね。でもそこには、和食のだしのベースがあるからこそ作れるんです。
橋:
そうですよね!そこの部分が「今までにない」和食の世界感と創出している感じがしたんです。
枝:
ぼくは安い値段で料理を提供しているから、だからこそ逆に素材にお金をかけられないんで・・・だから独創性の道をいかなければならないんです。
橋:
いや、でも、それがオリジナルですよね。
枝:
トロもあわびもなかなか使えないんでね(笑) でもそれが売りです(笑)
橋:
こないだパリのレセプションでいただいた時、ムール貝の赤だしをいただいたんですけど、あれが非常に特徴的で。
枝:
あのムール貝、生で食べられるんですよ!仕入れ値段も安いですしね!
橋:
へぇ、いいですね!あと、パリで「これけっこうイケるで!」っていう日本食に使える素材ってありますか?
枝:
先ほどもお話したムール貝、あと「トッポウ」っていう貝ですね。
橋:
「トッポウ」?
枝:
はい。そういう貝もありますし、それから日本食だとやっぱりジャガイモは圧倒的ですよね。
橋:
そうですか?やっぱりフランスのじゃがいもはおいしいんですか?
枝:
おいしいです。それから、あとね、僕の中では羊の肉も圧倒的においしい。
橋:
へぇ、なんか日本人から考えると、羊って「くさい」って思うんじゃないですか?
枝:
全く臭みもなく肉の甘みがあるから好き!あと、面白いのはやっぱりオマールですね、えびを生きたまま焼くのとか。あと中東の野菜とかアフリカの野菜が手に入りますしおもしろい感じですよ。
橋:
へー。そういったものは比較的手に入るんですか?
枝:
入ります。日本でも食べられないものがほとんどなのでパリの人もビックリされます。
橋:
なるほどね。ちなみに現地のフランス料理って言うところと、枝國さんがフランスでされている料理の味っていうのは、自分の中では共通点がありますか?
枝:
そうですね。
自分らが好きな味って言うのは世界共通やなって思うんですけども、「苦くてちょっと甘いもの」。例えば、コーヒーに砂糖だとか抹茶に和菓子だとか・・・それから、塩分濃度はその国民性によって違うけれど、やっぱり素材の旨みが生きていれば誰も文句は言わないんですね。後は「甘辛い味」ですね。これは世界共通ですね。
橋:
なるほど、甘辛い味ですね。
枝:
その部分をおさえた上で、「日本の表現」をするという感じ。
橋:
そうなんですか。(うなずいてる感じ)じゃあ、枝國さんにとっての「京料理」はおそらく創作するうえでベースになってることが非常に多いんですね。
枝:
もちろんそうです。
橋:
その京料理、というか日本料理を一言で言うとどんなイメージなんですか?(しばらく考え中)難しいですねぇ。昔から京都の人が食べる料理っていうのを「京料理」って言う人もやはるやろうし、昔京都の器のことを「今焼き」っていってたんですけど、「今」とか「新しい」という感覚なんですよね。それを京都の人ってそれを好むじゃないですか。だから京料理って言うのは常に進化してると思うんですよ。今生きてる世代の人たちにあわせて料理をつくるっていうのが僕の中での京料理であって、決して高い料理が京料理ではないということなんです。ですから、まず僕の中ではそれが価格、値段を下げるということであって、一番最初にそれをやりました。今の人たちに合わせて物を作るという点だと。これが原点です。それが京料理という言葉の「京」であり今という意味での「今日」かなと。
枝:
「今日」と「京」ですか!面白いですね!なるほど・・・
橋:
先ほど、器を例えにされましたけど、枝國さんはやっぱり器とかってお好きですか?
枝:
好きですね。今も東山の器屋さんに下見にいってたとこやったんです。?実は今日ね、お店に入ってくるときに僕この土鍋釜をもってたじゃないですか。そしたらお店のスタッフの方が「器屋さんですか?」って聞かれたんです。(笑)で、僕はすぐに「残念ながら米屋なんです」っていいました(笑)
橋:
(笑)僕も京都に帰ってきたら、いろんな人に今から器屋さんにいかはるんですか?っていわれます(笑)
枝:
器好きなんですね!後でこの大きいお米の器もお見せしますね!
橋:
では、最後に、お米のことについてお伺いさせてもらいます。枝國さんにとってのお米の価値観についてなんですけども、どのようにお考えでしょうか?
枝:
ひとことで言えば日本人の心ですね、お米に関しては当たり前のことですけどね。料理人として考えるには、やっぱりしめにくるんで、どうやって食べてもらえるかって考えますね。
橋:
うーん。
枝:
まず、お米の炊き方にもこだわりが必要ですし、値段と品質とのバランスを知るのも料理人としては重要ですよね。あと、よく見ているのは人のご飯の食べ方。何でかというとその人の人格を測ることができるんですよね。最後までしっかり食べる人とか食べ残す人、ほんとに面白いですね。食べ方ひとつで人間性が垣間見れる(笑)
橋:
はははは(笑)
枝:
お箸の使い方ひとつで、どういう教育を受けたかとか、どういう文化で育ったかとかもわかりますね。じゃあ食べる前に手を合わせることができるのとか。僕は、ごはんを食べる前のお客さんをよく見ています。どういうお客さんなのかなって特に確認してます。
橋:
なるほど。では枝國さんの好きなお米のタイプっていうのは?
枝:
僕は固いめです。
橋:
固め。
枝:
僕の家では固めで炊かれていたので、自分の親から味の好みが類似するのはそこですね。食べさせてもらった環境でぜんぜん違うんですね。昔の人って、結構やわらかいの好きな人多くないですか?そんな事ない?
橋:
まちまちですね。最近こしひかり信仰や食文化が変わってきているので、どちらかというとやわらかいお米が好きっていう人が多いですね。硬いお米がすきっていう人は、傾向的にはお米の甘味を楽しみたい人が多いんです。実は、今回このお米をインターネットでも販売しているものなんですけども、祇園のお店でも使っていて米料亭のお米がおいしいからって注文される方が結構いるんですよ。それで、今回実際にお店で使っているのが、この祇園囃子シリーズの「翁霞」って言う商品なんですね。こちらの翁霞がやわらかめなんです。結構奥深いでしょ。
枝:
何が違うんですかね?
橋:
やっぱりね、お米の作り方と関係がありますね。もちろん品種の差もあるんですけど。要は、毎年作り方によってお米の味が違ったり硬さも違うということなんです。「硬い」っていう表現はバリバリ硬い米とかじゃなくて、弾力がしっかりしてる米のことなんです。
枝:
「硬い」って言うのは弾力がしっかりしてるって事なんですね。
橋:
「やわらかい」って言うのは、粘りが強いって言うのと、あと歯ざわりが「しなっと」している。これが「やわらかい」という表現なんです。これは、やわらかい向けの「ゆめごごち」っていう品種と実は「こしひかり」もブレンドしてるんですよ。このこしひかりは長野産の「飯山地区」のこしひかりなんですけど、この産地は結構、年によってあたりはずれの差が大きくて今年は大当たりです。で、よかったので使ってるんですよ。
枝:
そーなんや。お米も当たりはずれあるもんな・・・
橋:
そうなんです。日本の米の現状は産地と銘柄だけでしか判断できないような世の中になっているのが現状で。隣の田んぼですら味が違う繊細なお米なのに、産地銘柄以外でおいしさの基準を設けるといったそういった新しい価値観を認めようとしないんですねっていうよりか、根付かないんですよ。
枝:
お米屋さんも信用商売が第一やったのに売れなくなってきたら、スーパーのお米は偽装まみれになってしまってるんですよね?何を信用したらいいかわからんようになりましたね。
橋:
ので、私はお米屋として、 なんとかもう一度、日本人としてのお米の価値感を再認識してほしいなと思い、お米ギフトを始めました。やはり「自分の選んだ産地のお米が美味しい」って宣伝しても「いや美味しいお米ならもっと他にあるよ」って言われてしまうので、どうしたら「おいしいお米」をお客さんに伝えることができるかなと思ったら「ギフト」という形になりました。最終的に八代目儀兵衛のお米は安心・安全で美味しいという評判が出れば、安心してギフトとして渡せるじゃないですか。それで、もらった人が「美味しかった」って言ってもらえることによって、送った人も「あ、送ってよかったな」と思われて自ずとブランドが構築されていく。ですから安心・安全が伝わる方法、いや戦略として、お米ギフトをインターネットからはじめました。
枝:
ええことやと思います。
橋:
今「引き出物」とか「内祝い」でうちの商品が売れておりまして、この商品は百貨店には卸してないので、実際見たいってお客さんが実際全国からインターネットを見てお越しになられるんです。
枝:
全国から来られるんですか?
橋:
はい。北は北海道から南は九州のお客様が来られます。最初は、西大路七条のお米屋さんで商品をお見せしていたんですけど、お米屋さんの事務所で見てもらうのはどうかなと思って、京都で観光もしてもらい、わかりやすい場所に「アンテナショップ」を出店しようと思っていたら、たまたまうちの祗園のお得意様が退店され物件が空いたので、そのタイミングではじめたんですよ。
枝:
なるほどね。
橋:
で、今回、パリでもパフォーマンスしていたこの土鍋、実は有田焼なんです。
枝:
へぇー有田なんや。
橋:
なんで有田かっていうとたまたま7年前くらいに有田の窯元の方と知り合いになりまして、釜によってお米の味が変わるって事を初めて知ったんですよ。で、何が違うかっていうと、一言でいうと土鍋で使われている土の成分による遠赤外線の放射率が高いかどうかということなんです。
枝:
深いなぁ・・・
橋:
その遠赤効果が高いとお米がふっくら炊けるっていうところがポイントで、市販されている土鍋釜とも比較したんですが、やっぱりこの土鍋のほうが美味しい、甘みが出ます。そんなところで、今日はちょっとこの釜、お渡しはできないんですけども、パリのお店ではいくつくらい御用意しておけばいいですか?
枝:
そうですね。3つくらいあれば。お客さんの前でパフォーマンスとして炊いて見せると、すごく喜ばはるかなと思います。
橋:
で、一応ね、パリに行った時にもお話したんですけども、紋を入れることできるんですよ。で、うちはお店というか儀兵衛の紋を入れているんですけども、もしお店の紋、マークみたいなものがあれば入れることもできはるんですよ。
枝:
せっかくだし、フランスの人にこの釜の宣伝もできますし、儀兵衛さんの紋のままでお願いします。
橋:
そうですか。ありがとうございます!ではパリのお店で使っていただけるということで、またできる限りのアドバイスや、扱い方であったりとか、火加減のほうとかもお伝えしますね。
枝:
ありがとうございます。又、パリでの報告をブログやインターネットでもどんどん発信していきますよ!
橋:
はい(笑)京都とパリで双方向からお米文化を発信できたら楽しいですね!
枝:
面白いですね。
橋:
是非お取り組みお願いします。パリでの土鍋ご飯の写真を送ってくださいね!
枝:
わかりました。
橋:
では、今日は長時間に渡り、本当にありがとうございました。
枝:
では又お会いしましょう!

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